2022年からこう変わる!
住宅ローン控除の新しい仕組みと
賢い利用方法を解説
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マイホームは人生の中でも大きな買い物です。新しい生活にワクワクする反面、高額の住宅ローンにプレッシャーを感じる人も少なくないでしょう。
住宅ローンの負担を少しでも軽くするために、住宅ローン控除(住宅ローン減税)という国の制度があります。この住宅ローン控除は、2022年度の税制改正で制度の4年間延長が決まったものの、控除率が1%から0.7%に縮小となりました。
今回は、2022年からの住宅ローン控除の新しい仕組みと、賢い利用方法を分かりやすく解説します。
まず、制度の仕組みを大まかに見ていきましょう。
住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。
個人が住宅ローンを利用して住宅(マンション・戸建て)の取得やリフォームをした際に、一定要件のもと支払う所得税を軽減する「税額控除」が受けられる制度です。
さらに、住宅ローン控除によって所得税が0円になった上でまだ控除額が余っている場合は、翌年の住民税からも控除される仕組みです。
筆者も住宅ローン控除を利用していますが、毎年の所得税が0円になり住民税からも控除されるため、家計的にとても助かっています。
つまり、マイホームを持ちたい国民を税金の面から応援する制度が、住宅ローン控除と言えるでしょう。
では、住宅ローン控除はどのような基準で控除の金額が計算されるのでしょうか?
2021年までの住宅ローン控除では、原則として年末の「ローン残高の1%」が、10年間(消費税10%適用物件は13年間)にわたり所得税の税額から控除される仕組みでした。
【例】新築住宅を購入して3,000万円の住宅ローンを組んだ場合
最大で 3,000万円 × 1% × 10年 = 300万円 の節税効果
ところが、近年は金利の低下が続き、会計検査院の調査では約8割近くの人が金利1%未満で住宅ローンを借りていることがわかりました。
また、住宅ローンの残高が多いほど控除額が多くなる仕組みのため、所得が高く高額なローンを組める人ほど節税効果が大きい制度になっている点も問題視されました。
この会計検査院の指摘を受けて、住宅ローン控除制度の見直しが図られた結果、2022年からは住宅ローン控除の控除率が「ローン残高の0.7%」に改正されることになったのです。
2022年から変更になった住宅ローン控除の条件は、2022年1月1日以降に居住を開始した住まいに適用されます。つまり、2022年より前から住宅ローン控除を利用している人の諸条件は変更になりません。
注意したいのは、住宅ローン控除の対象となる所得の条件が3,000万円以下から2,000万円以下に引き下げられ、所得が2,000万1円以上ある人は、住宅ローン控除を利用できなくなった点です。
2022年1月1日以降の住宅ローン控除の主な条件を見てみましょう。
住宅の 種類 |
認定住宅 | ZEH水準 省エネ住宅 |
省エネ基準 適合住宅 |
一般住宅 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
居住年 | 2022・ 2023 |
2024・ 2025 |
2022・ 2023 |
2024・ 2025 |
2022・ 2023 |
2024・ 2025 |
2022・ 2023 |
2024・ 2025 |
借入 限度額 |
5,000 万円 |
4,500 万円 |
4,500 万円 |
3,500 万円 |
4,000 万円 |
3,000 万円 |
3,000 万円 |
2,000 万円 |
控除 期間 |
13年 | 10年 | ||||||
控除率 | 0.7% |
住宅の 種類 |
認定住宅等 | 一般住宅 |
---|---|---|
借入 限度額 |
3,000万円 | 2,000万円 |
控除 期間 |
10年 | |
控除率 | 0.7% |
2022年からの住宅ローン控除は、控除率は一律「0.7%」になり、控除期間は13年または10年となりました。そして、住宅ローンの借り入れ限度額において、新たに住宅の省エネ性能ごとの区分が新設されています。
【例】新築住宅を購入して3,000万円の住宅ローンを組んだ場合
最大で 3,000万円 × 0.7% × 13年 = 273万円 の節税効果
この他にも、所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除額を翌年の住民税から控除する場合の限度額が、最高13.65万円から最高9.75万円に引き下げられる改正などが行われています。
2022年度の税制改正で控除率が0.7%に引き下げられたことからも分かるように、住宅ローン控除は、段階的に縮小される傾向にあります。これから住宅ローンを組む際は、どのような対応策があるでしょうか。
まず、2024年以降に住宅を取得する場合は、住宅の省エネ基準ごとに住宅ローンの借り入れ限度額が縮小されるため、住宅選びの際は省エネ基準を気にする必要があります。
特に、一定の省エネ基準を満たさない「一般住宅」は、住宅ローン控除を利用できなくなる場合もありますので、注意が必要です。
つまり、新築で2,000万円以上の住宅ローンの借り入れを考えている人は、なるべく2022年〜2023年末までに住まいを確保した方が良いと言えるでしょう。
次に、コンパクト住宅やシングル向けのマンションを検討している場合です。
住宅ローン控除は原則として50平方メートル以上の物件が対象ですが、次の条件を満たす場合に限り、住宅ローン控除の対象になります。
・床面積40平方メートル以上50平方メートル未満の新築または建売
・2023年12月末までに建築確認を受けた物件
・その年の所得金額が1,000万円未満の人
つまり、コンパクト住宅やシングル向けのマンションなどでは、この条件に該当するケースも少なくないため、やはり2022年〜2023年末までの入居がお得になると言えるでしょう。
ただし、中古住宅の場合は、年度に関わらず一般住宅の借入限度額は2,000万円・認定住宅等の借入限度額は3,000万円、控除期間は一律で10年です。
ここまで、住宅ローン控除の仕組みについて解説してきました。
住宅ローン控除は、ローン金利や景気の動向によって、今後も制度の内容が変わることが予想されます。
ただし、すでに決まった内容が後から変更になることはほぼありません。そのため、2025年までは今回紹介した内容で制度が運用されます。
現在の制度では、2024・2025年は借り入れ限度額が引き下げられます。そのため、様々な条件を気にせず住宅を選びたい場合は、2022年〜2023年末までに住まいを確保した方が良いかもしれませんね。
今回の記事が、あなたの理想の住まいやマネープランについて、考えるきっかけになれば嬉しいです。
(参考資料)
令和4年度税制改正の大綱(令和3年12月24日閣議決定)|財務省
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf