プラスワンライフラボでは、ライフスタイルと密接に関係してくる “自分らしさ”をテーマとしたプロジェクトを進めてきました。 このプロジェクトも終盤に差し掛かってきたので、 “自分らしさ”が注目されてきた背景や経緯を振り返りながら それを表現するために重要となるポイントや自分らしくあることのメリットなどを さらに深掘りしてリサーチすることにしました。 今回お話を伺ったのは、 それぞれ空間デザインとファッションの分野で プロデュースのお仕事をされている 「su+」の谷口氏と「シンデレラプランニング」の三村氏。 ラボメンバーとしてプロジェクトにも参加されているお二人には、 経験に基づいたご意見や普段それぞれのお仕事で感じていることなどを 教えていただきました。
su+(スプラス/UDS株式会社)
大学で建築の設計を学んだあと、株式会社都市デザインシステム(現UDS株式会社)に入社。
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株式会社りぷらす代表 トータルスタイルプロデューサー
2010年、ファッションやメイクへの苦手意識から、自身がほしいと感じるスタイル提案を実現するシンデレラプランニングのサービス提供を開始。
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住まいの分野でいうと、UDSで過去に基幹事業として行っていたコーポラティブハウスという集合住宅があります。コーポラティブハウスでは、入居希望者が集まり組合を結成し、その組合が事業主となって、土地取得から設計者や建設業者の手配まで、建設行為の全てを行うのですが、UDSではそのコーディネイトをしていました。住み始めるまで約2年間掛けて共同で行っていきます。
2年も掛けて建てるんですか。相当大変な作業になりますね。
そうですね。一戸一戸、そこに住む方のライフスタイルに合わせて間取りや開口部、素材など全てが異なる自由設計で、それが一つの建物に十数戸並ぶ様子は壮観です。自分がこういう暮らしをしたいということが明確にわかっている人や、表現することが習慣化している人たちにとても好評でした。テレビ局や広告代理店に勤務されているような方も多くいらっしゃった印象です。
ということは、どちらかというと
だったんですか。広く一般向けというよりは、こだわりのある入居者が多かったかもしれません。コミュニティもできるので、その分、入居者の満足度は高かったと思います。
そういった人たちは美意識や感度が高いので、ファッションやメイクなどの水準も高く、自分のスタイルを確立していました。
UDSでは2003年にCLASKA(クラスカ)というデザインホテルを作りましたが、これはホテルという形を取りながらも、まさにこれからの時代を「どう暮らすか」という提案でもありました。ホテルの部屋は9室で、それ以外はサービスアパートメントのような形でスケルトン貸しの部屋に自分で手を入れて住んでいて、ホテルラウンジを第二のリビングのように使ったり、そこで旅行客や地元の人と交流したり。シェアオフィスやギャラリーもありました。
シェアハウスも中古リノベーションも、今ではすっかり一般化し広く浸透しています。
ファッションやメイクでも、近年は限られた一部の人たちだけが楽しむものではなくなってきて、全体の水準が上がってきています。おそらく理由としては、世の中に情報やものが溢れてきたからでしょう。
情報やもの自体が増えているだけでなく、
昔は情報感度の高い一部の人がファッションや居住環境にこだわりを持っていましたが、今はもっと一般の層が興味を示し始めています。
誰でも自分で好きなものを探し出して、手軽に手に入れられるようになったんですね!
そういうメリットもあるんですが、
という問題も起きています。それはよくわかります。
昔なら10年20年で変わっていったものが、今では1年2年で変わっていくような感じです。情報が少なかったときは、ファッションがよくわからなくても雑誌に載っているトレンドやその時代のファッショニスタを真似していればよかったんです。流行って変化していくものですよね。それがIT化によって、流行の変わっていくスピードが速くなって、追いつけなくなってきました。そうなると、ものを買う基準やライフスタイルを描いていく基準も変化していきます。
時代とともに、真似をする対象がモデルさんから一般の人になっていって、普通の人が普通の人を真似するようになってきたんです。それからさらに進んで、
なんで人と同じにしているんだろうって。
そう。
っていうところから自分に似合うものやふさわしいものを選びたいというニーズが広がってきていましたし、その想いを私自身も感じていたので、「シンデレラプランニングをつくろうと思ったんです。軸さえあれば、SNSでたくさんの参考事例も見られるし、ネット販売で簡単に安く購入できる。良い時代です。
海外からシンデレラプランニングを受けに来た利用者は、『日本にいたころは周りと同じ服を着ている事に違和感がなかった。でも、海外で暮らすようになって初めて「自分で服を選ぶこと」の必要性に気づいたそうです。服を選び、着るという行動は重要な自己表現であり、画一的に真似をしていてはいつまで経ってもアイデンティティが確立されないのです。
まちづくりの観点から言えば、今またローカルな文化や風景の価値が見直されてきているのと同じ流れですね。ここ数十年、グローバル企業やナショナルチェーンの展開によって、どんどん地方の風景が均質化していく傾向がありましたが、その流れに歯止めをかける動きが出てきています。
全国どこに行っても同じチェーン店があるのは便利なことだけど、平均化していくことで失われるものも多いですよね。
だからUDSが展開するホテルでは、その土地独自の文化、歴史、素材といった、つまりその土地らしさの表現を大切にしています。例えば、沖縄県宮古島のホテルのインテリアで製作したテキスタイルは、ヤシの木やハイビスカス柄などなんとなくの南国調というものではなくて、しっかりと島の文化や歴史を踏まえたデザインを一から起こしており、しかも同じモチーフのものがお土産として手に入る。それは、宮古島らしさをより広く強くアピールすることにつながっていて、お客様だけでなく、地域の方々からも評判は上々です。
自分に合ったものを身につけていると自己肯定感が高まって、生きやすくなるということが言えます。
なるほど、洋服や髪型などは、一番手軽に変えられる要素ですよね。
私自身も昔から周りに強そうに見られているのが嫌でした。けれど、それを自分らしさとしてうまく表現できるようになったことで、強さを持った自分を否定せずに生きていけるようになったんです。だからもっと多くの人に自分らしさを知って、表現してもらいたいです。
今回シンデレラプランニングさんとコラボレーションした南浦和のプロジェクトでは、88診断に基づいて壁紙を色・柄・サイズまでカスタマイズできました。でも、お客様の様子を見ていると、カスタマイズの価値だけでなく、心理的な効果も提供できたように思います。これから始まる新しい生活を「どう自分らしく豊かなものにするか」を考えるきっかけになったのではないでしょうか。
私もファッションやメイクだけでなく、ライフスタイル全般に自分らしさを広げられないかと考えていたタイミングだったので、今回のプロジェクトへの参加はとてもいい機会になりました。
一番大事なのは、人生という舞台の主人公であるその人自身が輝けることなんですよね。ファッションも住まいも、その背景であったり、衣装であったりするわけですから。